生活に活きる医療。 インタビュー 医師/山本 太郎
一人から繋がる地域の健康
としま昭和病院へ来たのは14年前になります。
それまでは大学病院に在籍し、糖尿病や高血圧など生活習慣病に関する研究を主に行っていました。
大学病院の患者さんは極端な例が多く、合併症により、失明や脳梗塞などの一歩手前の方が多くいました。
この段階で治療を始めると糖尿病性腎症による透析導入など経済的な面も含めて患者さんの生活に大きく影響してきます。
これを最小限にするには、早期発見、早期治療が何より大切で、そのために患者さんの近くにいることが必要です。
そこで、頭の中の研究を実際の診療の現場で活かすべく、先輩の勧めもあり、としま昭和病院で働き始めました。
専門領域だけを診る大学病院と違い、何でも相談される診療に最初は戸惑いましたが、他の医師とも相談しながら乗り越え、患者さんともいい関係を築くことができるようになりました。
この地域は下町の雰囲気がありコミュニティの輪があるのはとても素晴らしいと思います。
「八百屋の〇〇さんに聞いてきた」という方もいて、一人の方に届けた情報がコミュニティを通して広がります。
特に糖尿病や高血圧は自覚症状がないため、健康診断を受けても「糖尿病の『け』がありますね」と言われ、「今年も指摘されちゃった」「ま、いっか」とほっておく方が多くいます。
ところが、症状が出た時には進行していることが多いため、早めに専門家へ相談する必要があります。
例えば、「足先が痺れる」や「足に紙が張り付いたような感覚がある」は糖尿病合併症の初期症状の一つです。
こういった何気ないサインを病院に来ない方に伝えるのは難しく、大きな課題の一つだと思っております。
今後も患者さんひとり一人を大切にし、それらを積み重ね地域の健康の一助となれれば幸いです。